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ふくしま浜街道トレイル⑧

ふくしま浜街道トレイルは2023年9月30日に開通した福島県新地町からいわき市までの約200kmを1本に繋ぐロングトレイル。

雄大な海を眺めながら、阿武隈山系に育まれた豊かな自然や地域の歴史、文化に触れることができます。また、東日本大震災や原発事故を永く語り継ぎ、見届けていく「伝承の道」でもあります。

当協会の佐藤理事が全行程を数回に分けて歩く、セクショントレッキングを実施。

俳人でもある佐藤理事の一句もお届けします。


Vol.3の2日目は浪江から小高駅までをトレッキング。

2025年3月24日

Vol.3 Day2

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レポート

09:00 ホテル双葉の杜発


09:50 酒田のから堤

 最初に立ち寄ったのは、「酒田のから堤」である。かつて、相馬地方の七不思議のひとつに数えられたという場所だ。

この堤の池にはカニとウナギが住んでいたという伝承が残る。互いに近くの同じ穴に住み、行き来しながら仲良く暮らしていたが、数が増えるにつれ、住むところや餌を巡って争うようになった。やがて争いは激化し、ついに戦いとなる。長い争いの末、ウナギは姿を消し、堤はカニの穴だらけになった。そのため水が溜まらなくなった。---という物語である。

田畑の広がる静かな土地に立つと、素朴な伝承が土地の記憶として今も息づいていることを感じる。


酒田のから堤
酒田のから堤

請戸川の支流に広がる田圃の脇に沿って歩く 花がちらほら咲いていた
請戸川の支流に広がる田圃の脇に沿って歩く 花がちらほら咲いていた

10:30  桃内駅  

 請戸川支流沿いの田園風景を歩き、やがて桃内駅に着く。小さな無人駅で、周囲は静まり返っている。列車の往来も少なく、時間の流れが緩やかに感じられる。


JR桃内駅
JR桃内駅

11:00 大悲山石仏

 この日は歩行距離が短く、時間に余裕があったため、トレイルを少し外れ、桃内駅からルートを変えて北上し、「大悲山の石仏&浪岩横穴古墳」を訪ねた。

 大悲山(だいひさん)には、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて彫られた磨崖仏が残る。岸壁に刻まれた千手観音像などは、長い年月を経て風化が進んでいるが、東北を代表する規模の磨崖仏として貴重な文化遺産である。傍に立つ大杉は樹齢千年を超えると言われ、静かな山中に長い歴史を感じさせる。

 

千手観音像と天然記念物の大悲山大杉
千手観音像と天然記念物の大悲山大杉

 大悲山石仏から北上し、小高の市街地に入る。通りには新たに開店した店舗も見られ、再生へ向けた動きがうかがえる。

東京から移住した若者が酒造りに取り組む醸造所を訪ね、町に新しい風が吹いていることを実感した。


立ち寄った「ぷくぷく醸造」
立ち寄った「ぷくぷく醸造」

12:40 昼食

 昼食は市街地の食堂でとる。ダイナーボンズだ。

かつて精肉店を営んでいたという店主が造る定食は、ボリューム満点だった。ジャンボフードはいわき市の名物と聞いていたが、これまで訪れた福島県の各地でも見られる。お客さんにたくさん食べてもらい満足してもらおうという福島県民のおもてなし、思いやりの心なのだろう。その気持ちに応えてすべて平らげたいという気持ちが沸いたが、持病のことを考えて控えめにしておいた。


ダイナーボンズのカツ丼定食
ダイナーボンズのカツ丼定食

  

13:40  小高神社

 午後は小高神社を参拝する。

相馬氏代々の守護神・妙見を祀る社で、「相馬三妙見」の一つに数えられる。

 鎌倉時代末から江戸時代初めにかけて相馬氏の居城だった小高城跡にあり、現在も地域の平穏を祈る神事「相馬野馬追」が行われる場としても知られている。境内に立つと、城下町として栄えた往時の面影が浮き上がる。


小高神社
小高神社

 近くにある柳美里さんが運営するブックカフェ「フルハウス」に立ち寄りたかったが、この日は定休日であった。

 後日、再訪した。

店内には彼女が選んだ作家や思想家の本がずらりと本棚に並べられている。カフェスペースでは地元の食材を使った四季折々の料理やコーヒーなどの飲み物が提供されている。彼女は震災後の2015年4月に神奈川県鎌倉市から南相馬市に移住したが、このカフェは自宅に併設されている。ここが絶望した人の魂の避難場所になればと思い、2018年4月にオープンしたという。


ブックカフェ「フルハウス」
ブックカフェ「フルハウス」

 

14:30 おれたちの伝承館

 これまで歩いてきた町々には公的な伝承館があったが、小高地区には民間施設の伝承館がある。「おれたちの伝承館」だ。旧ソ連のチェルノブイリ原発周辺の取材経験のある東京の写真家が、地元住民や芸術家たちの協力を得て、2015年7月にオープンさせた。震災や原発事故をテーマにした絵画や写真を展示している。公的な伝承館とは見方を変えて、震災や原発事故が何をもたらしたかをアートで伝えようとしている。ネット上では、未来を考えるきっかけになる場であるとの評価や公的な伝承館を補う施設との評価を受けている。


おれたちの伝承館
おれたちの伝承館

今日のゴール小高駅に到着


JR小高駅
JR小高駅

 

16:15 双葉屋旅館泊 

 小高駅近くの「双葉屋旅館」に宿泊する。ここで小高の名物女将に出会う。女将さんは小高で生まれ育った方だが、大学卒業後、地元を離れてサラリーウーマンとなり、全国各地を巡る転勤生活を送っていた。しかし、ご両親が体調を崩し、急遽実家の後を継ぐことになり、突如旅館の女将になったという。女将の役回りも板についてきた矢先、震災と原発事故が発生。小高地区も旅館も震災の影響を大きく受けていたが、原発から20km圏内のため避難地域になって立ち入ることができなかった。2012年4月、ようやく立ち入り制限が解除され、それから傷んだ旅館を修復し、2015年に営業を再開した。

 いち早く旅館を再建したばかりではなく、小高を愛してやまない女将さんは、地元へ戻ってくる人々の手助けをしてきたという。震災と原子力災害の苦難を乗り越え、旅館のみならず愛する町の再建に尽力する姿に心を打たれた。



【宿情報】

名称 双葉屋旅館

住所 〒979-2121 福島県南相馬市小高区東町1丁目40

TEL 0244-32-1618

活動記録

活動時間

09:00〜16:15

歩行距離

15km

​今日の1句
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