2024年11月18日
Vol.1 Day1

レポート
06:45 品川駅9番線ホーム 始発のJR特急ひたち1号
平日の早朝にもかかわらず、ホームには多くの人が並んでいる。東北新幹線が内陸を縦走しているため、茨城県や福島県の沿岸部で仕事や生活をしている人々にとっては、海岸線を走るこの路線は重要な交通路になっているのだろう。東京、上野と停車するごとに乗客は増え、座席は7〜8割ほど埋まった。トレッカー姿の乗客は見当たらず、ほとんどがビジネス客のようである。
天気予報どおり、前線通過の影響で列車走行中に雨となった。新装の車体を激しく叩く雨音を聞きながら勿来駅に着くころには上がってくれないかと願う。

08:58 勿来駅着
到着時には雨はすっかり上がり、曇天ながら西の空には雲の切れ間が見える。次第に西高東低の冬型の気圧配置に移っていくのだろう。
駅舎を出てすぐに目に飛び込んできたのは、源義家の銅像と和歌の歌碑である。
「吹く風を勿来の関と思へども道もせにちる山櫻かな」
後三年の役のとき、義家が奥州平定に下向する途中に詠んだ歌と伝えられている。勿来関にかかり、折りしも武者の背に舞い散る山桜の花に思いを寄せ、詠んだ歌と伝えられている。この歌を詠み、かつて国境問題に携わる仕事をしていた私にとって、感慨深いもの があった。

09:15 トレッキング開始、勿来駅出発
勿来駅から南方の勿来海岸へ向かう。この地がトレイルの南ターミナスである。通常は、相馬市新地町にある北ターミナスから歩き始めることが多いが、今回はあえて南から北へと進むことにした。車道の脇を歩くので走行車に注意を要する。山では熊に注意だが、低地では車に注意だ。
勿来温泉関の湯の前を通過し、およそ30分で勿来海岸に到着。
この頃には、雲の切れ間から日差しが射し始め、太平洋は灰色から次第に青みを帯びていく。
この海岸は南北を岬で囲まれた静かな砂浜。海に向かってやや左手に大きな岩が一つ立ち、その前には鳥居も建つ。神が宿る岩のようにも見える。そういえば、奄美や沖縄では湾口に立つ岩を立神岩(たてがみいわ)と呼んでいる。

10:00 勿来海岸南ターミナス出発
いよいよ勿来海岸の南ターミナスからのスタートである。西方の丘陵地帯へ向かうと、15分ほどで勿来関跡に着く。最初に目に飛び込んできたのは「吹風殿」。平安時代の建築様式を模した建物と庭園があり、往時の雰囲気を味わうことができる。吹風殿の裏手には「文学歴史館」があり、勿来関を音や映像を使い紹介している。さらに奥に進むと、石畳の路があり、和歌の石碑が路に沿って建てられている。源義家をはじめ、紫式部、和泉式部、小野小町などの著名な歌人の和歌だ。「勿来」は多くの歌人に詠まれてきた地名であることが分かる。

11:10 勿来関~勿来駅
勿来関を離れ山道を下り再び勿来駅に戻る。駅前の辺りにしか食堂はないようだ。駅の前に一軒の食堂を見つけた。店の親父さんはかつて東京で修行し、震災後も息子さんと一緒にこの店を続けているそうだ。津波の影響を尋ねたところ、勿来駅周辺には膝の高さほどで、大きな被害を受けなかったと教えてくれた。地形の影響が大きいのだろう。

12:15 勿来駅前を再び出発し、海岸線に出る。
海岸線には高さ約10mの防潮堤が設置されている。何キロにもわたって設けられている。その長さに圧倒される。海と陸とを完全に隔てていることには複雑な思いもよぎるが、津波対策としての役割は大きい。防潮堤に沿って陸側に防災緑地と称する盛り土があり、潮風に強い黒松などが植林されている。その盛り土の最上面に遊歩道があり、そこを歩く。海と陸を眺めながら歩けるこの遊歩道は最高だ。潮風が心地よい。こんなに大きな空を東京では見られない。

14:00 岩間公園着
鮫川大橋を渡り、勿来火力発電所を過ぎて、本日のゴール地点である岩間公園に着く。
思ったより早く着いた。時間に余裕あったので「北投の湯いわき健康センター」に立ち寄る。

14:40~15:30 北投の湯いわき健康センターにて入浴
柔らかい湯ですっかり疲れも和らぐ。宿へはタクシーで向かう。
17:00~ 宿泊交流施設AC館泊
宿は岩間公園から徒歩5分くらいの所にあった。プレハブ製の比較的新しい建物だ。
震災後に地元の老夫婦が建てた宿である。震災前にはこの地区には90の世帯あったが、震災後11世帯まで減少、多くの人々が他の地に移住したという。とはいえ、移住者の方のご先祖様のお墓はこの地にある。老夫婦は、旧住民の方が墓参りなどで帰省した際の宿泊所を設けよう思い立ち建てたそうだ。だから名称を「宿泊交流施設AC館」とした。
ちなみに、AC館はどういう意味ですかと尋ねたところ、奥様はニヤッと笑いながら教えてくれた。「亭主が電気工事関係の仕事をしていたので、ACは交流でしょう。そこからとったの」と、思わず笑ってしまった。
どのように経営されているか気になり、さらにお話を伺うと、岩間の海岸はサーフィンにとって絶好の波が来るところで、サーファーが良く利用してくれるそうだ。また、すぐ近くには「常盤共同火力勿来発電所」があり、出張の作業員も良く利用してくれるそうだ。それはそうだろう。格安の値段で家庭的な料理が提供されるからだ。
AC館に泊ったことで、人の強さと思いやりの心をあらためて感じた一日であった。

【宿情報】
名称 宿泊交流施設AC館
住所 〒974-8222 福島県いわき市岩間町岩下185
TEL 0246-88-8180
活動記録
活動時間
09:15~14:00
歩行距離
11.9km
今日の1句



