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【レポート】愛鷹連峰の最高峰アシタカツツジの『越前岳』

 越前岳1504mは富士山麓の南東にあり、宝永山を抱えた富士を眺めることができ"富士山の見える山"という印象が第一で、日本二百名山にも挙げられる人気がある山です。私も今まで眺望を楽しみに何回か訪れたことがあります。しかし実は天気が良ければ山に登らずして十里木の駐車場や少し上がった展望台からでも宝永山を抱えた迫力の富士山が見えてしまうのです。

 イベント当日、十里木に向かうバスの中から見る富士山は雲の傘で山頂を隠した状態。その周りにも吊るし雲を配し、悪天候を予感してました。仕方ない富士山はバスの中で愛でておくとしよう。だったら赤土の彫れた道を重い靴で登る価値はないのではなかろうかという思いが頭の中をよぎってました。

 十里木登山口に着くと頭上の雲が強風に飛ばされて行きます。"風で雲が飛ばされて富士山が顔を出すのを期待して歩きましょう"と、メンバーを励ますふりをして自分を奮い立たせました。

 歩き始めてすぐに道の状態が赤土の泥濘ではないことに気づきました。最近のお天気続きでいい具合に乾燥して歩きやすいのです。流石にアセビやブナなどの樹林帯に入ると道が掘れて溝状になっていました。その道を避けて歩けるように両脇をロープで区切ってあり、その中にいく筋か新たな道ができていました。溝状の元登山道の上に木道ができていたら自然保護出来ていいのにと考えながら脇の道を歩かせてもらいました。

 道中、濃いピンクの花を咲かせているアシタカツツジに出会いました。トウゴクミツバツツジに似ているけど葉っぱが5枚と区別がつきやすい。この花は現在放送中の朝ドラ"らんまん"の主人公のモデルとなった牧野富太郎が名付け親だそうで。時の花に出会えて嬉しくなった。そのほかにも黄色いミツバツチグリがカーペットのように広がっていたり。シロバナのシコクスミレが霧の中に幻想的に咲いていたり。葉っぱを広げたばかりのツクバネソウやフキのようなヤブレガサが傘を並べていたり。足元にはドウダンツツジやムシカリ(オオカメノキ)の花殻やマメザクラ(フジザクラ)の花びらが落ちている。きっと頭上の木の上でも花盛りなのだろう。いつの間にか富士山の眺望の事は忘れて、草花に見入ってしまってました。

 勢子辻との分岐では西寄りの強風で体を持って行かれる感覚でした。すぐに左の樹林帯に逃れると風が避けられて助かりました。じきに山頂に辿り着きましたが、そこは楽しみの駿河湾も富士山も五里霧中。早々に退散し風を避けて昼休憩。

 下りは風を背に東に降りるルートでしたので強い風に悩まされる事はなく。登山道沿いに咲くミツバツツジと記念撮影したり、岩場の斜面にアカバナヒメイワカガミに見惚れたり楽しいフラワーウォッチングができました。もちろん北白ガレンでは足元の崖が霧で下まで見えず。鋸岳展望台では鋸のようなギザギザも見れませんでした。

 最後まで期待していた眺望はなく。山神社駐車場を経て、チャーターしたバスが迎えに来る愛鷹登山口バス停に降りましたが。このお天気だったからみずみずしい草花たちに出会えたのだと満足したのでした。十里木から山頂を経て山神社へと下る縦走路は植生豊かであることを今回初めて知りました。幾つものピークハントすることを目的とする登山ではなく、同じ山を季節を変えて違う表情を楽しむのもいいと感じました。




2023年4月22日(土) 越前岳

文・西岡(理事)

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