国立公園を見直そう

糠平湖畔からひがし大雪の雄ニペソツを望む(大雪山国立公園)

旧士幌線の廃線跡に作られた「東大雪の道」(北海道自然歩道の一部)を歩く
これはちょっと困ったことでもあり、ありがたいことでもあり、なるべくしてなったことでもあるのですが、ここのところのぼくの仕事の半分以上はヴォランティア。4月のアースデートークも、5月のナチュラルハイでのトークも、そして、3月の伊豆大島からはじまり、大台ケ原、そして先日(5月28日、29日)の北海道糠平で行われた日本トレッキング協会主催「桜トレッキングイヴェント」も、すべてはヴォランティア。
歳とれば、それまでのささやかでもあってもその経験を社会還元へ、と思い続けていたそのとおりになっているこのごろ。ということは、それ相応の歳になってしまったということでしょうか。嬉しくもあり、悲しくもあります。
.jpg)
照葉樹林に浮かぶオオシマザクラ(伊豆大島ー富士箱根伊豆国立公園)

三原山噴火口
.jpg)
大台ケ原西の境界線尾根から大峰山脈を望む。このルートはまだ一般公開されていない(吉野熊野国立公園)
.jpg)
ヤマザクラ、見事に混じる春もみじ(大台ケ原西側山腹)
桜トレッキングイヴェントは九州から北海道までの、全国29ある国立公園内の桜前線を追いつつ北上していくというアイディア。本格開始は来年度からで、今年はそのトライアルでとりあえず3箇所だけ。日本トレッキング協会副会長で世界の山を歩き尽くす田部井淳子さんが、「やっぱり日本の自然は本当にすばらしい。とりわけ桜咲く日本の風景美は、絶賛もの。この桜前線を追いながらトレッキングするというイヴェントはどうかしら」と発案。
20年ほど前から国立公園をひとつのテーマに仕事をしてきたぼくが、「それならばせっかく全国にわたり29もある国立公園内の桜前線を追うトレッキングにしましょう」と提案。いま、日本の国立公園は危機的な状況にあり、そのすばらしさをもう一度日本人に認識してもらいたいということと、危機的な現況をクローズアップしたいというぼくの思いからでした。
最近、大手新聞紙も含め、テレビや雑誌などのメディアの間に国立公園意識が低くなっていることから、国民の間においても国立公園離れがはじまっています。たとえば、2005年に知床が世界自然遺産に登録されたというニュースのなかに、そこが国立公園だという文言がほとんどないに等しいほどに無視されています。それは屋久島が自然遺産に登録されたときも同じでした。いま、とりわけテレビや雑誌において、世界遺産(文化遺産も含む)がブームになっています。マスメディアが騒げば、国民も騒ぎます。ユネスコにより世界遺産に登録されること自体、決して悪いことではありません。グローバルな視点から人類の遺産として認められたということでもあり、それはとても名誉なことではあるのです。
にもかかわらず、ぼくはそのブームに嫌気がさしています。ブームはやがて去るもの。騒ぐ理由はわかります。メディアも視聴率が稼げるからであり、雑誌も売れ、地元は観光客で儲かります。しかしいま、世界じゅうのあちこちで観光客の押し寄せによる世界遺産危機が叫ばれています。利用過多により自然、文化が痛めつけられているのです。ユネスコは、そのような世界遺産を世界危機遺産として登録しています。そして、いずれは抹消することもできるのです。ブームに沸きやすい日本人の国民性。日本の世界遺産も危機遺産にならないことを望むばかりです。
国立公園は、その騒ぎの片隅に追いやられているのです。本来、国立公園は保護と利用という両面から自然公園法という法律で定められたシステムです。自然のありかた、自然と人間との関係のありかたを学ぶに最もわかりやすく、適したシステムが国立公園だとぼくは考えています。できれば、子供への自然教育として義務教育のなかに取り入れることが望ましいと考えています。自然や自然保護を知る、象徴的なサンプルが国立公園なのです。だからこそ、ぼくはずっと国立公園を歩き、取材を重ねてきました。『日本の国立公園』(平凡社新書)という本も書いています。
国立公園を旅しているにもかかわらず、国立公園にレンジャーがいることすら知らない日本人が圧倒的に多いのが現状です。そして、国立公園の地元の人々があまりにも国立公園のことを知らなすぎます。そこで、桜トレッキングイヴェントでは、環境省と協議をし、それぞれの国立公園のレンジャーにも参加してもらうことにしました。そして、地元の自治体にも声をかけ、プロのガイドにお願いし、トレッキングの後にはトークショーや懇談会を開き、参加者(国立公園利用者)とレンジャーと地元の方々との交流を深めます。ぼくが国立公園の問題点や魅力、概況をお話し、レンジャーに当該国立公園の説明をしてもらいます。ようするに日本トレッキング協会は、そのつなぎ役をするのです。国立公園を管理するレンジャーと歩けるトレッキングは、稀有なことでもあり、とても意義の深いイヴェントになると思っています。
ただ、桜は難しい。先日の北海道糠平(大雪山国立公園のひがし大雪エリア)は、残念ながらすでに、期待していたエゾ桜は去ってしまっていました。今年は桜前線の移動が早かったからです。色とりどりの若葉色の山麓にエゾ桜の濃いピンクが散在するほのぼのとした風景は見ることはできませんでしたが、鮮やかな新緑とひがし大雪の残雪の山々が歩くぼくたちの心を充たしてくれました。
ところで国立公園の危機的状況は、さらに深刻になっています。ひょっとすると国立公園管理が環境省ではなくなる可能性も出てきたのです。国立公園はどこの国でも国が責任をもって保護と利用のバランスをとりながら管理するからこそ、人々は国立公園の価値を感じているのです。にもかかわらず、「管理を都道府県に」という話し合いが、総理府に置かれた委員会「地方分権改革推進委員会」で行われているのです。このことはまた、別の機会にしっかりと書くつもりです。
いよいよこの動きが本格的になってきたときには、ぼくは可能な手立てで、ささやかながらも抵抗しようと考えています。そのときは、このブログを読んでくださっている皆さんも、どうぞ応援してください。
とりあえず「ビーパル」の6月10日発売号で、ぼくが元環境大臣の小池百合子さんにインタビューした記事が出ます。そこで、この問題にも触れていますので、ぜひ、お読みください。

